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封筒失踪事件(解決編)

 病室で私は静かに言った。
「あなたが犯人だったんですね」
母はフッと笑うと
「私は隠したつもりはないのよ」
と言った。
「ただ、仕舞った場所を変えただけ」
それは確かにそうだろう。
「よく気付いたわね」
母はそう言った。
「あなたはミスを犯した」
私は静かにそう言った。
「前回の見舞いの時、私が家捜ししたが封筒は見つからなかったと言った時、あなたはこう言った」
『もう気にしなくていいから。私が帰ったら自分で探すから』
「非常用に自分で貯めておいたお金、けっして少ない金額ではなかった。それを父に無くされて『もう気にしなくていい』はおかしいでしょ。それと『自分で探す』というのもおかしい。、父だけでなく私も探したのに見つからなかったのに、まるで自分が探したら見つかるような言い方だ」
一気にそれだけ言って、私は少し間をおいた。
「あなた自身が隠したのでなければ、このセリフは出てこない。だから私は考えた。あなたが封筒を隠すことが出来た場所を」
私は病室を見回しながら続けた。
「ここは前回の見舞いの時に、念のためと探したが無かった。もちろん完全ではなかったが、ここではない」
私は視線を母に戻した。
「なぜならあなたは『帰ってから探す』と言ったからだ。ならば、封筒は家にあるのだろう。そして病室にいるあなたが隠せたというなら、ここへ持ち込んで、持って帰った物の中」
母が目を逸らした。
「そう最初から封筒はハンドバッグの中から出されてなかったんだ」
ハンドバッグには隠しポケットがあった。
その中に封筒は入れられていたのだ。
父がハンドバッグを持ってきて、母が封筒を確認した時に隠しポケットへと入れて返したのだ。
父には隠しポケットの存在を知らせずに。
「お父さんには言ったの?」
そう母が聞いてきた。
「言うわけないでしょう。ただこれ以上探されても面倒なので、『封筒は見つかったけど場所は言わない。また別の所に隠されて同じ事を繰り返すのは面倒だから』と言っておきましたよ」
私はにっこりと笑って母にそう報告した。

封筒失踪事件 Q.E.D

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